40年ぶりに復活した、手作業の本醸造醤油作り
ミツル醤油醸造元は、近隣の個人客から注文をもらい、
宅配するスタイルで営業を続けてきた 地域密着型の家族経営による小さな醤油屋さんです。
しかし、生醤油を組合から仕入れ、 甘味や旨味を加えることで自社の醤油を作るという製法に
疑問と限界を感じた四代目の城慶典さんが一念発起、
伝統製法による醤油作りを決心したのが3年前のことです。
ミツル醤油醸造元に限らず、九州における大半の醤油屋さんは
醤油のベースになる生醤油を仕入れて、オリジナルの味付けを行い、
火入れして、瓶詰めをするというのが一般的。
つまり、元の醤油は同じということになります。
大豆を蒸し、小麦を炒り、麹室で醤油麹を作り、それを塩水に入れて熟成させ、
もろみを作るという醤油作りにおける最も重要な行程は、
一切省かれているのです。
この最も重要で時間がかかる行程を昭和40年頃を境に
ショートカットするようになったからこそ、
現状のような低価格で醤油が提供されるようになったことを知っておきたいものです。

気持ちのこもった、真直ぐな醤油を造りたかった
2013年の春に初めて搾られたのが、2010年に仕込まれた2桶分。
20石桶1桶の容量は3600ℓ。そこに900kgの塩を投じて作った塩水を入れ、
1200kgの大豆と1200kgの小麦で作った醤油麹を加えたものです。
塩は佐賀の海塩「一の塩」を使用。大豆と小麦は糸島産です。
3年目の仕込み分からは、塩を「またいちの塩」に替え、
原材料をすべて糸島産としています。
さらに、今後は大豆と小麦を無農薬・無化学肥料栽培のものにしていくことも検討中です。
20石桶から搾れる生醤油は約1600ℓ程度です。
歩留まりはよくありません。麹に対する水の量が少ないのと、
圧搾後に加水などをしないためです。
まさに「何も足さない、何も引かない」、純粋無垢の醤油なのです。
一切の添加をしていないので、味に雑味がなく、香りもいい。
もろみが持っている旨味のバランスを
そのまま残しているから後味がよく、クリアな印象です。
しかし、設備投資を行い、いい材料を使い、昔ながらの製法で時間と人手をかけ、
しかも歩留まりが悪い結果、販売価格はかなり高いものになりました。
現在、ミツル醤油醸造元で販売されている定番商品と比べると、実に10倍の価格です。
しかし、城さんは自らのブログの中でこう語っています。
「そもそも醤油を醸造するというのが醤油屋の仕事で、
それをまた取り戻して本当に気持ちのこもった、
まっすぐな醤油を作って、お客さんに喜んでほしい。
そして死ぬまでずっと醤油を作っていたい。
(中略)そして、価格を下げるのではなくその価値を伝えて、
この値段でも喜んで買ってくれるような努力をしようと」。
九州の食卓は、そんな城さんの心意気を応援します。
桐箱入りのギフトセットもあります。

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